犬養の組織するグラスホッパーの幹部である喫茶店ドゥーチェのマスターこそが、兄を殺害した男と判断し、対決を挑もうとする潤也。
事前にそれを察知し、自らの“能力”で潤也を殺そうと企むマスター。
マスターの能力の有効範囲内、50歩圏内に差し掛かるその瞬間。“背中を押した何者か”によって、マスターはトラックに轢かれ、即死。潤也も、マスター自身も、そして読者である私自身も予想だにしないマスターの最期でした・・・。
あれだけ第一章で安藤を苦しめた強力な異能の持ち主であったはずのマスターが、
ほんの背中の一押しで死ぬ。一章ラストの安藤の死を思い出させる無常さを感じます・・・。
そしてマスターを殺した男は、業界最高峰の殺し屋、“
押し屋”と呼ばれる男。
なぜ彼が「業界最高峰の殺し屋」なのか、その理由は明かされませんでしたが、見た限りはマスターや“鯨”のような特殊な能力は持っていない様子。犬養を殺すために雇われた殺し屋と見て間違いないようですが、ほんとに『背中を押す』だけで殺しをするのでしょうか。
同じく殺し屋として裏の世界に存在する“蝉”との対決などを想像してしまいます。
謎深い人物の登場によって、更に混迷を増す
『魔王 JUVENILE REMIX(ジュブナイルリミックス)』のストーリー。
先の読めない面白さが、第二章になってますます深まってきたように思います。
ただの登場人物の一人だと思っていた安藤の弟、潤也が主人公となった事の意外性はもちろん、現実味の薄い特殊な“異能”を持つ人物たちが存在することに対して、その物語の内容は現実にある世界そのもの。唐突に起こる登場人物の死亡などもそれを物語っています。この現実の曖昧さとそれを裏切る“リアル”のギャップが読み手を引き込むんですよね。
第二章になってから、潤也の視点に映ってストーリーは進行していますが、第一章に比べると、主人公の“戦う理由”は分かりやすいです。
潤也の目的は「兄の仇討ち」。これだけで、潤也が“対決”する理由になる。
対して、第一章の安藤はその目的がいまいち不透明だったように感じます。
自警団グラスホッパーを組織し、猫田市の改革を図る犬養の裏の顔を知った安藤が、そのやり方に疑問を持ち、犬養と対決する・・・有体にいえばこんな感じになるのでしょうか?
でも、安藤自身は“腹話術”という能力が使える以外は全く普通の少年だった。弟の潤也と二人で平和に暮らしていければそれでいいと思っていた。なのに、彼が犬養との対決に駆り立てられたものはなんだったのか。
・犬養の裏の顔を知ったから
・自分が腹話術という能力を持っていることの意味を求めて
・自分自身を止めるのは安藤の役割だという犬養の言葉に感化されて
・流され、考えることをやめるという人生を捨てるためどれも理由はあると思いますが、全て曖昧に感じるんですよね。
犬養にしたって、彼がやっていること自体はある意味正しい。犬養と対立するアンダーソングループの方がよっぽど「悪」に感じることの方が多いです。
安藤はなぜ命を賭けて、犬養と対決したのか?━━━━第二章になっても、この疑問は生き続けているのではないでしょうか。仇討ちのために犬養に迫っていく潤也が、その理由を知ることにも繋がるのではないかと思います。
安藤は“腹話術”の使い過ぎによる副作用で死んだのであって、誰かに殺されたわけじゃない。
なら、潤也が兄の仇を探して対決しようとする理由は本当に正しいのか?何と戦い、何と対決し、人は人生を終えるのか。この物語のテーマのひとつと言っていいのではないでしょうか。
安藤の物語は終わりましたが、彼が言った“
魔王”という言葉。これは本当に犬養のことを指しているのか、それとも他の何かを表す言葉なのか?
次を読ませない展開と現実と不現実の要素が重なる
『魔王 JUVENILE REMIX(ジュブナイルリミックス)』。
読ませる漫画として期待すると同時に、今後の展開も楽しみです。
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